高齢者が長時間座っても疲れにくく、快適に過ごせる椅子を開発するために、実際に疾患・症状別に高齢者を対象にリハビリデイサービスを運営している株式会社Famstationの代表 木村薫さんに、椅子の形状、材質、サイズ、脚や背面の角度、座り心地などについて、事前ヒアリングや試作品ができた段階での使用感など複数回にわたり、様々な機能の助言をいただきました。
その助言に関しましても、商品開発の段階で開発者が協議事項として検討し、1年の開発期間を経て最適と考えられる手法にて完成させたのが、グラシアチェアとなります。
開発ストーリーの一部とはなりますが、ぜひご一読いただければ幸いです。
人間工学的手法による研究結果は、長時間座っても疲れにくい椅子とするためには、座圧が均一であり、座ったときの不快感を取り除くことが最も重要であるとしています。
そこで、今回は高齢の健常者を対象とした椅子の開発という観点から、座面の構造はウェービングテープを使って座圧の均一化を図って座り心地を良くすることが最適であると考えました。
また仕上げ材を耐久性が高く汚れに強いレザー(合成皮革)を使用することで、水や中性洗剤で汚れを拭くことができ、メンテナンスがしやすい様にしています。
体圧試験・分析評価を受けた結果、長時間座っても疲れにくく、座骨が痛くならない座面とすることが出来ました。
・女性平均身長60〜69歳:154.0cm
・女性平均体重60〜69歳:53.4kg
体圧分布測定協力:福岡県工業技術センター インテリア研究所
座面の一部にくぼみや骨盤の位置を固定するような曲面による座面は、体型の違いや、猫背、反り腰、腰痛、臀部痛等の様々な人がいる中で、人によっては座り心地が悪く不快に感じたり、無理のある体勢で座ることにより、逆に疲れたり痛くなったりする可能性があります。
そこで、グラシアチェアは座面をウェービングテープ構造とすることにより、人によってある程度座る位置が異なっても座圧が均一になり、さらに前方調整パッドを内蔵し、太ももから膝の範囲に体圧を分散させ、座圧がより均一になるようにしています。
そうすることで、体圧試験・分析評価を受けた結果、長時間座っても疲れにくく、座骨が痛くならない座面とすることが出来ました。また、背もたれに関しては、無理なく身体への負担がかかりにくい、ゆるやかなS字姿勢となるような形状で、座面と背もたれの角度は人間工学的手法に関する研究結果(被験者複数人に対して調査した統計結果)に基づいた適切な角度の椅子を2タイプ試作品として準備し、理学療法と作業療法に精通した専門家と協議した結果、最適なリクライニングの角度を得る事が出来ました。
座面の高さを調整できるようにするかどうかを検討した際に、椅子の座面を4cmの範囲内で調整できれば個々に身長や足の長さ等が異なる利用者の座る高さを最適な座面の高さにすることが出来ると考えました。
しかしながら、微妙な高さ調整となるため、座面カバー等で高さを変えることができても、体重の違いによる座面の沈み込みや、同じ身長でも骨格や足の長さ等の若干の体型の個人差によっても最適な高さとはならなくなる事と利用者の体型が年月と共に変化する可能性も考慮し、60〜70歳の高齢者男女の身長と体重の平均値から、最適であると考えた椅子の高さに統一しました。
椅子の形状を統一する事で製作コストが大幅に抑えられ、より安価な価格でお客様にグラシアチェアを提供できるとも考えました。
試作品を製作した段階で、この意見に対応している商品となっているか、開発者側で検証しました。検証した結果、試作品時より数cm脚を後方に傾けて伸ばすことにより、安定性が増すと考えられた為、調整しました。
また、座面、背もたれ、肘(垂直・水平)においては強度試験を受け安全な商品であることを確認しています。
杖置き場に関しては、家の中で杖をついて生活をされている高齢者があまりいないであろうと考え、杖を置く機能を椅子には取り入れませんでした。
ただ、施設のロビーなど外靴のまま滞在する場所にグラシアチェアが設置されることも想定される為、市販の杖ホルダーを肘に取り付けられるような形状としています。
また、ヘッドレスト、オットマンは開発者の方でもあった方が良いと考えていたので、頭の位置に合わせて高さ調整ができるヘッドレストと、座面の高さに対して最適であると考えた高さのオットマンを開発し、オプション品として商品化しました。
ヘッドレストとオットマンを設置することにより、長時間の映画鑑賞や仮眠をとるなど、様々なシーンで、よりリラックス効果を発揮できるようになっています。